有機製品を輸出する場合の注意点
「グリーンウオッシュ」(Greenwash)とは、グリーン(環境に配慮した)とホワイトウオッシュ(安価な塗装、転じて「ごまかす」という意味)の造語。
企業活動や商品・サービスよる環境影響について、消費者に誤った印象を与える行為を示す。
欧米では上辺だけで環境に取り組む企業は「グリーンウオッシュ企業」と呼ばれている。
海外ではNGO(非政府組織)などが精力的にグリーンウオッシュを告発している。
最近は、企業のグリーンウオッシュ広告やCMを掲載して批判するウェブサイトがいくつもできている。
批判を受けて、広告やCMを中止した例もある。
英国広告基準審査協会(ASA)が昨年(2008年)8月に発表した報告書によると、環境関連の広告への苦情件数は2006年には83件の広告に対して117件だったのが、2007年には410件の広告に561件の苦情が寄せられ、5倍近く増加した。
「企業側もせっかく資金を投じて広告を打つのだから、消費者の信頼を損なうようなことは避けたい。
しかし、環境に配慮していることを強調しようとするあまり、比較の対象範囲を自社に都合よく設定してしまうといった力が働きやすいのも事実。
欧米の方が広告関連の規則が多く、環境団体の発言力も強いという側面もある。」
海外でグリーンウオッシュとみなされた事例をいくつか挙げてみよう。
- ネスレ・ウオーター・ノース・アメリカ社が広告でうたった「ボトルに入れられた水は世界で最も環境的に責任のある消費者商品」などの訴求内容について、環境団体から事実でないと批判された(2008年)
- 米国広告審査局(NAD)は、アームアンドハンマー社が自社洗剤を「ナチュラル」と訴求した表現が不適切であると判定した(2008年)
※次ページ新聞記事参照
グリーンウオッシュは、法律やルールで「この条件を満たせばグリーンウオッシュとは見なされない」という類のものではない。
消費者がどう感じるかが問題であって、しかも生活者の感覚はどんどん変わっていく。
それに応じて、企業も広告表現や情報の伝え方を変えていかなければならない。
海外においては日本の「業界の常識」は実需者の目からは偽者と判断されかねない状況であることを認識し対応する必要がある。
海外において「消費者が注意すべき点」と言われている「グリーンウオッシュ10原則」
1 |
明確さを欠く言葉 |
例えばエコ・フレンドリー、エコロジカル、「自然○○」 |
2 |
汚染企業のグリーン製品 |
河川汚染をもたらす工場で生産されるエネルギー消費効率の高い電球やオーガニック食品など |
3 |
暗示的な絵 |
クリーンなイメージは環境への好影響を示唆する。 |
4 |
的外れの主張 |
ほかはあまり環境に配慮していないのに、ごく一部の環境活動のみ強調したり、慣行と有機の並行生産現場で有機を強調するなど |
5 |
クラスで一番 |
環境活動が遅れている産業の中で、同業者より環境に取り組んでいることを主張することなど |
6 |
筋が通っていない |
「オーガニック」を称していながら使用資材から有害化学物質を排除しない生産現場からの産品は環境保全に資していない。 |
7 |
わかりにくい表現 |
科学者だけが確認、あるいは専門家だけが理解できるような言葉と情報 |
8 |
空想上の友人 |
「環境ラベル」などは第三者からの承認を得られたように見えるが、企業が独自に作った場合もある |
9 |
証拠がない |
「無農薬栽培の原料使用」など正しいかもしれないが、法的根拠や証拠がどこにあるのか不明 |
10 |
全くのうそ |
完全に偽造された主張やデータ |
「化学物質排出把握管理促進法(化菅法)」は、化学物質による人や生態系への悪影響を未然に防止するための法律である。
2000年3月に施行された。
柱となるのが、PRTR(化学物質排出・移動量登録)制度とMSDS「化学物質等安全データーシート」制度だ。
市民から開示請求があれば、個別の事業所のデーターを開示する仕組みだ。
従業員が21人以上の企業では、指定された化学物質で年間1t以上製造・使用する物質の排出・移動量を把握し、届け出る必要がある。
PRTR制度の対象になる化学物質は、「第一種指定化学物質」と「特定第一種指定化学物質」だ。
第一種指定化学物質は、人の健康を損なう恐れ、動植物び生息・生育に支障を及ぼす恐れがあるなど有害性があり、環境中に広く継続的に存在するものを指す。
トルエンやキシレンなど354物質が該当する。
製品に含まれる化学物質の情報を、川上の企業と川下の企業で共有するための仕組みが、MSDS制度だ。
指定された化学物質を含む製品を取引する企業に、物質の性状や取り扱いに関する情報の提供を義務付ける。
PRTR制度と異なり、すべての企業が義務の対象になる。
MSDS制度の対象物質は、第一種指定化学物質に、81物質ある「第二種指定化学物質」を加えた合計435物質。
第二種指定化学物質は、第一種指定化学物質と同じ有害性があり、製造量が増加した場合などに、環境中に広く存在することになると見込まれる物質が該当する。
昨年(2008年)11月に、化管法施行令を改訂する政令が公布され、法律の対象になる化学物質と業種が変更された。
今年(2009年)10月に施行される。
有害性に関する最新の知見や製造・輸入量を踏まえて、第一種指定化学物質を354物質から462物質に、第二種指定化学物質を81物質から100物質に変更した。
12物質だった特定第一種指定化学物質は、今回、ホルムアルデヒドや鉛化合物などを加えて15物質に増やした。
改正後の対象物質の排出・移動量の把握を2010年度から、届け出を2011年度から実施する。
日本国内の化学物質政策に関しては、現在、省庁タテ割りで、同じ物質でも呼び名が違うほどだ。
殺虫剤のように規制のない分野もある。
2002年の環境開発サミットで、化学物質のリスクから人の生命と健康、そして生態系を守るため化学物質と有害廃棄物を2020年までに急速に削減させ人間の健康と環境への悪影響を最小限にする方法で使用、生産することを達成させることに合意した。
その達成には今の法制度のすき間を埋めたり、改正したりするだけでは限界がある。
総合的な法制度によって横くしを刺すことが必要だ。
既に政府においては、化学物質政策の基本法を制定する方向で検討が進められている。
同法では「予防的取り組みを理念」(プリコーショナリーアプローチ)として、子供や胎児への配慮をしていく方針だ。
もちろん、国際的に「有機食品の生産の原則」からも「生産行程の管理又は把握に関する計画の立案及び推進」において、この点を第一義にすべての有機農業関係者は注意しなければならない。